<Kのつぶやき>ウールの生分解性実証実験

2022年11月1日(火)~2日、東京国際フォーラムで開催されたJFW JAPAN CREATION(以下JFW-JC)内にて、「Bishu Style 2023」が開催された。コロナ禍でも継続してJFW-JC内にて、尾州産地のモノづくりを発信し、商談に結び付けてきた。今期も感染対策を講じながら、進化する産地を発信するために、パブリックスペースでは、従来の旭化成(株)による「Bembergのサステナブル性」を発信する展示に加え、「ウールのサステナブル」についてパネルのみではなく見える化された展示を行った。業界の方はすでにご存じかと思いますが、今年、世界で唯一、ベンベルグを生産している旭化成(株)延岡工場の火災事故が発生し現在、ベンベルグは限定供給を余儀なくされている。例年、旭化成(株)とのコラボレーションにて製造してきたウールとベンベルグの交織、交撚素材“Wool meets Bemberg”の展示コーナーの継続が危ぶまれたが、Bishu Styleに出展する有志が意を決して、自社や産地内でストックされていたベンベルグを調達し、素材製作に挑んだ。彼らの展示会ならではの新素材提案を掲げる意志をより全面に押し出すために、出展社へアンケートを行いウールサステナブルの中でも、「生分解性」と「リサイクル」に焦点を当てて展示物を構成し、テキスト&画像での開設ではなく「よりリアル」に感じていただくように前述2種のウールサステナブルの“実物”を用い、ストーリー性を持たせながら、展示・解説を行った。動物性素材のウールと、植物由来素材のベンベルグが1つになることで“Wool meets Bemberg”素材はより確固たるサステナブル素材となる、という仕立てにした。

本Blogではまず、「ウールの生分解性」について、実際に行った実験を解説してまいります。

「ウールは生分解するって言うけど本当?」と思う人も多いのかもしれない。もちろん、研究施設で行う実証実験は目にする機会もあるかと思うが、普通に普通の人が「ウールを土に埋めたら、どうなるの?」という観点で、弊社のベランダにプランターを置き、実際にウール生地を土に埋めてみた。用意したのは、出展社でもある木村員毛織(株)よりご提供いただいた“先染めウール100% 生織&後加工済”の2種。理論的には生分解が促進される条件は、“温度&湿度”であるために日本のムシムシする夏に実験をスタートさせた。また、バクテリアによる生分解であることと、昨年のパネル展示でも説明したように、ウールは生分解だけでなく、生分解された結果、草木が成長するのに好条件となる土壌の断層構造を形成することが机上ではわかっているので、このバクテリア促進のために、魚が泳ぐ水槽(水中バクテリア混在)の水を定期的にプランターへの水やりに活用し、“サラダカブ”の種を植えて、その発芽率や成長度合いも同時に観察してみた。

 

【実験期間】
2022年8月10日 ~ 10月31日(約2.5ヵ月)
【使用素材】
先染めウール100% 生織&後加工済

 

2022 年8 月10 日 ~実験スタート~

気温:32℃ / 湿度:61% / 気圧:1009hPa
本当に生分解するのか、ドキドキで土に埋めた。

 

2022 年9 月2 日

気温:23℃ / 湿度:98% / 気圧:1017hPa
生織、後加工済、ウールを埋めていない土と3種の土壌にサラダカブの種を植えた結果、同じ条件に植えたにも関わらず、3種共に発芽はするが、ウールを埋めていない土の芽は成長することなく枯れてしまった。

 

2022 年10月30 日

気温:18℃ / 湿度:41% / 気圧:1021hPa
生織、後加工済のウールを埋めた土から発芽した芽は最初、同じように成長していったが、後加工済のウールを埋めた土から発芽した芽の方が成長が早いことがわかった。

 

2022 年10月31日 ~発掘~

ドキドキしながら土を掘る 何かがぶつかった箇所で堀り上げてみる
土から出したままのウール生地 土を水で洗い流したウール生地

展示会前日に、プランターに埋めた生織、後加工済のウールを掘り起こしてみると、2.5ヵ月という非常に短い期間であったが後加工済のウールの方が、早いスピードで生分解されている結果となった。これは、後加工の際に羊毛本来が持つ“油分”が取り除かれた結果なのでは?という仮説が立った。本来、流通しているウール素材は全てが何かしらの後加工が成されていることから、ウールの素材自体またはウール製品を土に還すと生分解されやすいのでは?という利にかかった結果になったように思う。
 

this blog written by T.Kanemaki
*本ブログは筆者の独断と偏見の元に記載されておりますので、ご了承ください。