羊毛からウール生地が出来上がるまでは、3つの工程があります。 |
A.紡績工程:ウールの毛糸を作る |
B.織布工程:糸を織り上げる |
C.整理工程:織物を仕上げる |
A.紡績工程
・ウールを、洗い、すき、紡ぐといった毛糸を作る段階です。 |
①毛選
・羊毛の品質チェック |
・品質に応じて仕分け |
原産国からの検査データを基に、一俵一俵、太さ、長さ、スタイル、植物 質の含有量などをベテランの目でチェックします。 検査されたウールは、品質に応じてブレンドされ、ベルトコンベアーの上で さらに人の手により異常なウールが取り除かれ次の工程へ行きます。 |
②洗毛
〔洗毛機〕 |
・洗毛機で石鹸とソーダ水を使い洗う (副産物の油(ウールグリース)は、精製するとダノリンがとれ、口紅やクリーム等の原料に。) |
・廃液は、環境基準に適合した廃液管理処理へ。 |
洗毛機の中で、油や土砂や植物質の不純物を含むウールを、ゆっくりと押し洗いし、純白な洗い上げウールにします。 |
③-1.梳毛カード(スライバー工程)
・洗い上がったウールは大小のふっくらした固まりになっているが、これをカード機にかけて繊維1本1本にほぐし、スライバーという「繊維の長さを平行に並べたロープ状の繊維の束」にします。 |
〔コーミング工程ともいう〕 |
③-2.再洗(スライバー工程)
・スライバーをさらに細く引き揃えるとともに、再洗機で洗毛段階でとれなかった植物性不純物を取り除きます。 |
〔カーディング工程ともいう〕 |
④トップ
・きれいになったスライバーを巻き上げて西洋こまのような形にするので、これをトップと言います。 |
〔トップ〕 |
※この段階で染色することを、トップ染と言います。色ぶれのない均一で安定した 色合いが得られます。その他、糸の段階で染色することを糸染め、生地(反物)の段階で 染色することを反染めと言い、用途に応じて染色方法を選びます。 |
また、この段階のスライバーは赤ちゃんの腕くらいの太さで、1m当り25グラム位です。 |
⑤前紡
・前紡機でさらにスライバーを引き伸ばして、 うどん位の太さにします。 |
⑥精紡
・このスライバーをリング精紡機で糸の太さに引き伸ばすとともに、 糸を紡いで行きます。この糸を1分間に1万回転以上回るスピンドルで 巻き取っていきます。 |
⑦単糸にする
・巻き取った糸をコーンに巻き返しながら、糸むらや不良部分をとりさります。 |
〔コーン〕 |
⑧双糸にする
・単糸でも織物は出来ますが、通常、2本の単子をより合わせ双糸にして使います。 |
〔チーズ〕に双糸を巻き上げ |
※⑥~⑧までをリング精紡機で一気にするのがサイロスパン |
以上は、ウールの中で梳毛といわれる軽くてしなやかな糸を 作る工程です。 |
ウールの中では、もう一つ、紡毛と言われる梳毛より短い原料を 混ぜ合わせて太い糸を作る工程があります。 紡毛糸は、出来た段階でニット糸や手編み用の毛糸として、 そのままでも出荷されます。 |
B.織布工程
・織布とは、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を直角に 組み合わせて布にすることです。 |
①経整経
・経糸を必要な本数だけ織物の幅に合わせてシート状にして ビームというドラム缶を横に細長くした様なものに、巻き取ります。 |
〔ビーム〕 |
通常の150CM幅では、4,000~6,000本の経糸が使われます。 |
②経通(たてとおし)
・ビームの各糸の先端を、ドローイング・イン・マシーンによりヘルド という針金の穴と筬(おさ)の目に、一本一本通していきます。 これで、織る準備ができました。 |
〔準備完了〕 |
③織布
・織機では経糸を一本一本通したヘルドで、組織に合わせて経糸を上下に開き、その間に緯糸を通します。そして通った緯糸を、筬で叩いて詰めます。 |
〔シャトル織機〕 |
緯糸を運ぶ方法には、シャトル(日本語:「杼」ひ)を使う伝統的なものと、グリッパー 等を使った高速織機があります。 50Mを織るのに、シャトル方式なら20時間位、グリッパー方式なら6時間位かかります。 |
C.整理工程
織上がったものを生機(きばた)と言い、この状態では毛織物の ふくらみがなくガサついています。 ・生機を、柔軟で膨らみのある自然の光沢をもった手触りの良い 毛織物に作り変える工程が整理工程(=仕上げ工程)です。 |
【サージ、ギャバなどで代表される<梳毛織物>の整理工程を説明します。】 |
①毛焼き
・生機の表面の毛羽を、ガスの炎の上を通して焼きます。 火に強いウールの特性を活かした工程で、なめらかでクリアーな表面に なります。 |
②洗絨(せんじゅう)
・洗剤で汚れを落とし、重いローラへ何回も通します。それにより 適度な柔軟性と膨らみが出ます。 |
③湯のし
・ローラーに巻き込んで熱湯の中で、ローラを回します。織るときに 引っ張られた糸の弾力性を取り戻し、後の工程で角の縮みをなくします。 |
④毛剪(けせん)
・仕上工程で発生した余分な毛をかりとり、滑らかにします。 |
⑤蒸絨(じょうじゅう)
・スチームに入れて蒸します。これにより自然な光沢を持った形くずれの しにくい、しなやかな毛織物になります。 |
【一方、フラノ、ツイード等で代表される紡毛織物の整理工程を簡単に説明します。 】 梳毛織物に比べて紡毛織物の整理工程は、バラエティーにとんでいます。 大きな違いを、二つ説明します。 |
・縮絨工程
・重いローラの中を何回も通すことにより、ウール繊維だけが持つ 特色でフェルト化現象が進み、お互いに絡み合い緻密で厚い織物に なります。 |
・起毛工程
・表面変化をつける工程で、ハリガネやアザミで表面を引っかき毛羽を 引き出し、好みにそれを刈り揃えたり、寝かせたりします。 |
梳毛織物も紡毛織物も仕上げの最後に、検反と反巻をします。 |
⑥検反
・毛織物を検反台に進めながら慎重にチェックします。 |
〔検反〕 |
⑦反巻
・検反でパスしたものだけを、反巻し梱包して出荷します。 |
【こうした様々な長い3つの工程を経て、ウールの特色を 最大限に生かした毛織物が誕生します。】 |