尾州産地における整織事業所設備調査 報告

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戦後、経済産業省(元通商産業省)の指導により「織機登録制度」がスタートし当時、国内の織物生産量の把握と繊維製品の輸出規制に伴った「織機の共同廃棄事業」で日本国中の織物業者は、不要となる織機を国に買い上げてもらってきた経緯がある。世は21世紀を向かえ、織機を製造するメーカーも転廃業が続き、現在の織物業者が保有する織機も機種によってはメンテナンスが不可能になりそうな織機タイプもある。そんな状況の中で、現存する製織メーカーが需要に応じた織物を安心して製造でき、産地規模を把握するために日本毛織物等工業組合連合会は、2012年度~2013年度の2年間に渡り尾州産地における整織事業所設備の保有台数について調査を行った。

ウールの国内最大産地である尾州は、「尾西」、「尾北」、「津島」、「名古屋」、「岐阜」の5つエリアに分かれている。本調査は、5つの地域毎に主要織機となる「ションヘル織機(※1)」、「レピア織機(※2)」、「グリッパー式織機(※3)」、「エアジェット織機(※4)」の4機種についての調査を行った。

<織機説明>

(※1)ションヘル織機:緯糸を搭載したシャトルが左右に動き緯糸を挿入する織機
(※2)レピア織機:片側から緯糸をつまんだレピアヘッドが飛び出し、中央でもう一方から
        来たレピアヘッドが糸をつまみ、元に戻る方式で緯糸を挿入する織機

(※3)グリッパー式織機:一方から糸をつかんだ金属製の小型グリッパーシャトルを飛ばして
        緯糸を挿入する織機

(※4)エアジェット織機:空気の噴射で緯糸を飛ばす方式の織機

 

同調査はアンケート及び聞き取りで行われ、250事業者を対象とした。産地全体(調査協力250社のみを対象)の織機保有台数は、合計1,529台であった。

◆レピア織機:884台(構成比58%
◆グリッパー式織機:296台(構成比19%
◆ションヘル織機:252台(構成比17%
◆エアジェット織機:97台(構成比6%

上記結果をみて、織機別の保有台数でみると産地の需要規模等を考慮すると適正な台数であると判断している。

 

機種別でのエリア比率を見ると

◆レピア織機:尾西40%、尾北12%、津島33%、名古屋0%、岐阜15%
◆グリッパー式織機:尾西61%、尾北0%、津島23%、名古屋0%、岐阜16%
◆ションヘル織機:尾西54%、尾北17%、津島19%、名古屋3%、岐阜7%
◆エアジェット織機:尾西56%、尾北4%、津島34%、名古屋0%、岐阜6%

という結果となった。

 

日本毛織物等工業組合連合会では、本調査の情報を整理して、製織事業者台帳(仮名)を作成する計画をしている。これは、織機の老朽化が進み、製織工程を存続するための対策として今後、織機タイプ毎に、同じ織機メーカー・同型機種を保有する事業者間で機械の更新、部品の共同購入や技術面での情報交換をする場を設ける必要があると考えているからだ。特に全体構成比で17を占めるションヘル織機は、国内生産回帰で注目されている織機であるが、織機自体の生産中止から30年以上が経過し、部品供給が困難な状況にあり、織機を扱える技術者も高齢化傾向にあり、部品の供給体制、技術の伝承の両面において対策が必要であると判断している。ションヘル織機は汎用性が高い織機であり、特殊糸や異番手使い、高密度で複雑な組織にも対応できる。ションヘル織機で織られた生地は、膨らみがあり、風合いなど表情・肌さわりにおいてアパレルのバイヤーやファッションデザイナーの評価が高い。このような尾州産地の素材特性を活かすことができる織機を失うことは、日本の繊維産業衰退を加速させる要因であり、今まさに海外からの需要が見込める日本製素材を絶えさせないためにも、必要最低限の維持だと思われる。